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◆◇
朝食後、直久たちが向かったのは、裏山だった。
朝食の準備をする山吹一家を手伝いながら、和久が収集した情報によると、この屋敷の裏に実に怪しい場所があるというのだ。
「ほら、昨日言ったでしょう? このペンションは内部だけでなく、外部からも何らかの影響を受けてるって」
ペンションから裏山へと続く獣道を歩きながら、和久は説明し始めた。先頭を行くオーナーには聞こえないように小声になる。
「聞くところによると、この裏山にはこの辺り一帯の山の神様を祭った古い祠(ほこら)があるらしいんだ」
「祠?」
「うん。その祠こそ、女の子たちが生け贄としてささげられていた、神様の祠だったんだ」
「マジかよ。めっちゃ怪しいじゃん」
「でしょう? だから、早速お願いして、案内してもらってるってわけ」
「なるほど……」
直久が、腕を組んで、さも納得という顔で頷いた。その素直な反応に、ふわりと笑った和久だったが、ふと視線を直久の背後に送る。直久もその視線につられて、首をひねり、背後を振り返った。
「……」
「ゆずる辛そうだね」
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