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だが、自分には使えない、見えない。
そこに霊がいると言われても、何も感じない。分からない。
「でも。確かに聞いちゃったんだ、オレも。そして、見たんだ。手を。あの手は生きてる人間のものじゃなかった」
「うん」
ゆずるの足首に絡みついていたいくつもの青白い手。昨夜のことをひとつひとつ確かめながら言葉にする直久に、和久は全てを受け止めるように頷いた。
前に誰かが言っていた。
霊の存在を信じるか否かという質問は、霊を見ている人にはナンセンスだと。なぜなら、彼らはいつも霊と共に生きているのだから。
「霊や僕たちの力をちゃんと認識したら、どうしてこんな力を持っているのだろうって疑問に思ったんだね」
自分のモヤモヤとした気持ちを、さらりと代弁され、直久は素直に頷いた。
自分はいったい何者なのだ。何のためにこの世に生まれてきたのだろう。
ずっと自分は、必要の無い人間だと思っていた。
でも、自分にも何か力があるのだとしたら、何か役目があるのだとしたら、それは何なのだろう。
「いいよ、教えてあげる。本当は、お祖父様か、お母さんに聞いた方が確かなんだけど、今知りたいでしょ?」
その覚悟はあるのか。
全てを受け止める覚悟はあるのか。
真実を見る目は持っているか。
そう問われているような気がした。
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