5 うぜぇ……

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 だが、自分には使えない、見えない。  そこに霊がいると言われても、何も感じない。分からない。 「でも。確かに聞いちゃったんだ、オレも。そして、見たんだ。手を。あの手は生きてる人間のものじゃなかった」 「うん」  ゆずるの足首に絡みついていたいくつもの青白い手。昨夜のことをひとつひとつ確かめながら言葉にする直久に、和久は全てを受け止めるように頷いた。  前に誰かが言っていた。  霊の存在を信じるか否かという質問は、霊を見ている人にはナンセンスだと。なぜなら、彼らはいつも霊と共に生きているのだから。 「霊や僕たちの力をちゃんと認識したら、どうしてこんな力を持っているのだろうって疑問に思ったんだね」  自分のモヤモヤとした気持ちを、さらりと代弁され、直久は素直に頷いた。  自分はいったい何者なのだ。何のためにこの世に生まれてきたのだろう。  ずっと自分は、必要の無い人間だと思っていた。  でも、自分にも何か力があるのだとしたら、何か役目があるのだとしたら、それは何なのだろう。 「いいよ、教えてあげる。本当は、お祖父様か、お母さんに聞いた方が確かなんだけど、今知りたいでしょ?」  その覚悟はあるのか。  全てを受け止める覚悟はあるのか。  真実を見る目は持っているか。  そう問われているような気がした。  
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