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弟に、ではない。“運命”というものに、だ。
直久はごくりと生唾を飲み込み、それから、もう一度、ゆっくり頷いた。
「よし。じゃあね、まず……直ちゃん、陰陽師って知ってる? 安倍晴明(あべのせいめい)とか聞いたことない?」
「ない」
「うん、そこからだね」
ちらりとゆずるを気遣う視線を送ってから、再び直久の目を見て、和久は説明しだした。
「陰陽師というのは、平安時代に活躍した、いわば占い師みたいな人たちのことで、安倍晴明は、その陰陽師の中で最も力が強いと言われた人なんだ」
「はあ……」
いきなり平安時代まで話が飛んでいってしまい、直久は拍子抜けした声で返事をした。
(せっかく勢いつけたのに……)
「だいぶ前に、占いブームになった時、安倍晴明が注目されたから、彼についてはそこそこ知っている人が多いけど、陰陽師=安倍晴明みたいに思い込んじゃっている人がほとんどなんだ。だけど、陰陽師っていうのは、仕事の一種なわけ」
「刑事さん、とか言ってるのと変わらないわけだな」
「そう。だから、彼の他に何人もの陰陽師がいたわけね。まあ、他の陰陽師が彼一人の影に収まってしまうほどに、安倍晴明は強い力の持ち主だったんだ」
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