5 うぜぇ……

13/19
前へ
/280ページ
次へ
 和久はいったん言葉を句切った。足下の雪に目を落とす。 「彼の影で、歴史の波に呑まれ、消え去っていった陰陽師たちの中に、大伴泰成(おおとものやすなり)という人物がいたんだ」 「どっかで聞いたことがある気がする」 「そりゃ、僕たちの御先祖様だもん」 「なぬ?」  突然話が自分たちの一族につながったので、直久は目を見張った。 「ところが、僕たちの御先祖は他の陰陽師たちみたいに、晴明の影で黙っているような人じゃなかったんだ。彼は晴明と同等、ううん、それ以上の力を手に入れようとして、様々な鬼たちと契約した」 「はあ? 契約? 鬼と?」  直久は顔を引きつらせた。 (鬼と契約って……)  鬼というものを見たことはない。だが、その契約が良いものが悪いものかというのは、感覚的に想像できた。  よく西洋の小説や映画でも、自分の欲のために、悪魔と契約をした人間の話がでてくる。 (何となく……ショック……)  自分たちのご先祖さまは、実はあくどい人だったのだろうか。 「自分の死後、自分の体を捧げるから、自分の式神になれ、って契約したんだよ」 「か、体を捧げる!?」
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6348人が本棚に入れています
本棚に追加