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和久はいったん言葉を句切った。足下の雪に目を落とす。
「彼の影で、歴史の波に呑まれ、消え去っていった陰陽師たちの中に、大伴泰成(おおとものやすなり)という人物がいたんだ」
「どっかで聞いたことがある気がする」
「そりゃ、僕たちの御先祖様だもん」
「なぬ?」
突然話が自分たちの一族につながったので、直久は目を見張った。
「ところが、僕たちの御先祖は他の陰陽師たちみたいに、晴明の影で黙っているような人じゃなかったんだ。彼は晴明と同等、ううん、それ以上の力を手に入れようとして、様々な鬼たちと契約した」
「はあ? 契約? 鬼と?」
直久は顔を引きつらせた。
(鬼と契約って……)
鬼というものを見たことはない。だが、その契約が良いものが悪いものかというのは、感覚的に想像できた。
よく西洋の小説や映画でも、自分の欲のために、悪魔と契約をした人間の話がでてくる。
(何となく……ショック……)
自分たちのご先祖さまは、実はあくどい人だったのだろうか。
「自分の死後、自分の体を捧げるから、自分の式神になれ、って契約したんだよ」
「か、体を捧げる!?」
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