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次から次へと、信じられない言葉が飛び出すので、若干ついていけてない。だが、なおも和久の言葉の攻撃は続く。
「鬼とか、妖怪たちの中にも、性格の違いがあるんだけど、大抵、捧げられたら、食べるよ」
「……た、食べる……!? だ、誰を!?」
「だから、契約者を。実際、彼が亡くなった瞬間、その死体が、髪の毛一本残さず消えちゃったんだって。つまり、彼に使役されていた鬼たちが契約通りに持っていったからなんだ。ある鬼は右腕、ある鬼は左足みたいに、彼の死体からもぎ取って──」
「ひえええええーっ」
小さく叫びながら、両頬に手を当てた。そんな直久にニコリと微笑む弟の姿が急に恐ろしいものに見えてきた。
彼にとって、それは日常なのだ。それが普通に行われている世界に、今までも生きてきた。
ヒトが動物の一部であり、弱肉強食という自然の摂理の中で生きているのと同じように。直久の知らない世界の厳しい掟を垣間見た気がして、どう飲み込んでいいか分からなかった。
「彼は、より強い式神を手に入れるために、強大な力をもつ鬼を探し歩いてこの関東まで来た。そして一匹の雌狼と出会ったんだ。その妖狼は真っ白い毛並みの、本当にきれいな狼だったんだって。まぁ……いろいろあって、彼はその狼との間に女の子を儲けた」
「儲けたって。狼だろ?」
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