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「人間と獣の結婚って、よくある話だよ。中でも狐の例が一番多いね。人間に化けた狐と、そうとも知らない人間の獣婚の話、昔話とかになって語られてるでしょ」
「ぶ、物理的に無理だと思うのはオレだけだろうか……? ほらサイズとか、その他もろもろ……」
「あーハイハイっ!! とにかくっ!!」
直久の頭の中が、よからぬ方向へ突き進んでいくのを、和久が寸前のところで食い止める。
「生まれてきた女の子の名前は、小夜(さよ)」
小夜……妖狼と人の間に生まれた娘……。
まるで、小説やB級映画か何かに出てきそうな設定だ。
他の人が聞いたら、冗談でしょう? と鼻で笑われるのがオチだろう。本当にそんなことが現実にあったというのだろうか。
いや、でもそれを本気で信じているのが自分たちの一族なのだ。
(妖怪、悪霊、神。オレたち一族は、いったい何者なんだ……)
自分たちこそ、ヒトの形をした“ヒトでないもの”なのかもしれない。
「ちなみに、清明よりも小夜の方が強い力を持っていたと言われているんだ。それが証拠に、清明は自分を負かせた小夜に、幾度も求婚したんだけど、そのたびにフラれていたとか――もっとも、そんなことを言っているのは、うちの家だけだから、少々脚色されてるだろうけど」
と言って、和久は肩を竦めた。
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