5 うぜぇ……

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「幼い頃、小夜は泰成ではなく、母狼に九匹の兄姉たちと共に育てられたそうだよ」 「もののけ姫っ!」 「……で、彼女は成長と共に、関東で名声を高めていくんだ」 「ってスルーかよっ!!」 「その名声は、遠く都にまで聞こえるようになり、度々都へ呼ばれるようになる。まあ、ここで清明と対面したんだろうね」 「ってそれもスルーかよっ!!」 「巫女として活躍した彼女は、九匹の妖狼を式神に持っていたことから、九狼の巫女と呼ばれるようになったそうだよ。九狼――その“くろう”という音がいつの間にか“くどう”になって、“九堂”になり、それが本家の姓となったわけ」 「…………」 「どうしたの?」 「いえ……途中から消化不良で、胃薬欲しい感じなんデス」 「うん、一気に言い過ぎちゃったかも」  幼い頃から、この話を何度も聞かされてきた和久にとっては、学校で暗記させられる『枕草子』よりもスラスラと言葉が出てくるらしい。
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