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「幼い頃、小夜は泰成ではなく、母狼に九匹の兄姉たちと共に育てられたそうだよ」
「もののけ姫っ!」
「……で、彼女は成長と共に、関東で名声を高めていくんだ」
「ってスルーかよっ!!」
「その名声は、遠く都にまで聞こえるようになり、度々都へ呼ばれるようになる。まあ、ここで清明と対面したんだろうね」
「ってそれもスルーかよっ!!」
「巫女として活躍した彼女は、九匹の妖狼を式神に持っていたことから、九狼の巫女と呼ばれるようになったそうだよ。九狼――その“くろう”という音がいつの間にか“くどう”になって、“九堂”になり、それが本家の姓となったわけ」
「…………」
「どうしたの?」
「いえ……途中から消化不良で、胃薬欲しい感じなんデス」
「うん、一気に言い過ぎちゃったかも」
幼い頃から、この話を何度も聞かされてきた和久にとっては、学校で暗記させられる『枕草子』よりもスラスラと言葉が出てくるらしい。
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