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最後に弟は、要するに一族の人間離れした力は、自分たちの血にその雌狼の血が混じっていることが原因だ、と言った。
「狼だけならいいんだけどね」
「え?」
「婚姻を重ねることで、血が薄まり、力を失うことを畏れた僕らの祖先は、薄くなる度に妖怪と交じったらしい」
そして、さらりと和久は言ってのけた。
「たとえば、お祖母様のお父様がイタチの妖怪なんだ」
「い、イタチ……ご冗談をっ」
「でも、曾お祖母様は未婚でお祖母様を生まれたんだ。うちのようなお堅い御家で、未婚の母って普通じゃないと思わない? 勘当するくらいはしそうでしょう? なのに、その母娘は厚く礼遇され、娘が当主に嫁ぐんだ。おかしくない?」
確かに、和久の言ってることは筋が通ってる。
だけど、そうなると……。
「オレらイタチが混じってるわけ……?」
「うん。だから、ゆずるの髪は亜麻色なんだと思う。イタチの毛色が隔世遺伝したのかもね」
「イタチの遺伝子が俺らの中にぃ……っ!?」
衝撃に打ちのめされ、直久はその場に立ち尽くした。突然足を止めた直久の背中をよけるように、ゆずるが横へずれた。
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