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しかし父はそんな甘くは
無かった…
母は行くあてもなく
寒さ厳しい冬のネオン輝く
夜の街を靴も履かず大きな荷物を抱えてさ迷っていた
「お…お母さんっ!?」
聞きなれた声…
母は感動のあまりその場に
しゃがみこんだ
「癒姫ちゃん…」
か細くよく耳をすませなきゃ
聞き取れないほどの小さな声
癒姫は裸足で薄着の母の元に
駆け寄った
顔には殴られて腫れた跡
腕には無数のタバコの押し当てた跡…
癒姫が家に帰らなかった
数ヶ月で母はこの有り様だ
「ゴメンね…お母さん…」
癒姫は母のとなりで
一緒にしゃがみこんで泣きながら呟いた
「癒姫ちゃん帰ろ?
お母さんの実家に行こう?」
うんと頷くと母と手をとり
真冬の歌舞伎町を後にした
癒姫は父から逃げるのに
必死だった
もうこの店には来れない…
この店には父が来る
幸い会わなかったのが
唯一の救いだった
数日前に父が訪れた
癒姫は店の奥に逃げ込んだ
トイレで胃酸が出るほど吐いた
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