an artificial arm

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「もう……所長、帰るの早すぎますよ。まさか、桐生さんも一緒だなんて……」 涙目になりながら部屋の隅で正座をしている結衣。 彼女の頭には大きなたんこぶが出来ており、『只今、猛省中』と書かれたプレートを首にかけていた。 罪状は職務放棄とその他諸々。 「……いや、女を殴ったのは久しぶりだわ」 「すいません……僕が先輩を放置していたばっかりに」 申し訳なさそうに頭を下げる時臣君。 本当に偉いな、彼は。もう少しあの女にもこの姿勢を見習ってもらいたい。 「神谷、俺の目の前で……まあ、今回は目を瞑るがな。それにしても結衣ちゃんは相変わらずだな」 苦笑しながらソファーに座る桐生刑事。 「そんなぁ……桐生さん、目の前で起こった大事件を見逃すなんて……警察は本当に汚れた組織になってしまったの!?」 オヨヨとオーバーなリアクションをする結衣。 「…………」 誰がどう見てもあいつが悪いので、皆華麗にスルーする。 「うわっ、酷い!!無視ですか、そうやって国民の意見を無視するんですか!?」 「さてと……拍子抜けしてしまいましたが、本題に行きましょうか桐生刑事?」 「ああ、そうだな」 新しく煙草に火を着ける桐生刑事。 「……刑事さんと所長は、コーヒーでよろしいですか?」 コーヒーメーカーを取り出す時臣君は、三人分のカップを持って尋ねる。 「ああ、構わない」 「俺もそれでいい」 「私はコーラ!!」 「冷蔵庫にありますから、好きに取ってください」 条件反射のように素早く答える時臣君。 全然猛省していない結衣は、うんと頷くと冷蔵庫からコーラを取り出した。本日二本目、と。 「何か……色々と大変だな」 「はい……もう色々と……」 桐生刑事の感想に思わず大きく頷く。 「はい、どうぞ。刑事さんと所長は、ブラックでしたね」 そんな事をしている内に、時臣君がコーヒーと一緒に灰皿を持ってきた。 「お、ありがとう」 感謝の意を述べる桐生刑事。 ……本当に優秀だな、時臣君。
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