an artificial arm

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「……で、件の切り裂きジャックについて現時点での情報だけど」 こちらの返事も聞かず、勝手に話を進めようとする桐生刑事。 「いや無理ですって、どう見ても一般に依頼する内容じゃ無いでしょ」 いくらお世話になっている人の依頼といえども、流石に命には代えられない。 「ああ、一般じゃどうにもならないから、此処に依頼しに来たんだろう?」 だがこちらの返答を意にも介さず、桐生刑事は淡々とした口調でそう言った。 「…………」 成程。さっき車内であんな事を言ったのは、そういう事だったのか。 「ふぇ?桐生さん、言葉おかしくないですか?確かにこの事務所には人が来ないし、所長は変な人ですけど……」 結衣が会話に割り込んでくる。 変な人ってお前が言うな。 「流石に殺人依頼請け負うほど狂っちゃあいませんよ!?」 やだなもうアッハッハ、とおばさん風に手を動かす結衣。 「…………」 「アッハッハ……って、所長?」 無言の俺に嫌な予感を感じたのか、ピタリと動きの止まる結衣。 悪い……確かに俺は狂っちゃあいないが、俺なりの事情と言うのがあるんだよ。 「まぁ……さっきはあんな事を言ったが、とりあえず話を聞いてみようじゃないか」 「え」 結衣の動きが完全に停止する。 そして、二秒後には、 「えええええ!!!?」 また耳元で今日一番の大声を上げた。
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