アンチテーゼと携帯小説

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 私は流れるような目線で喫茶店の古びたテーブルから、季節柄お洒落に飾られた窓を眺め見た。窓は結露気味にうっすらと枠から水滴が付いていたが、クリスマスも間近の装飾がそれをより幻想的にさせていて、私の心をこことは違うどこかへと運んでくれる。……そんな気分にさせた。師走のせわしない街並みとは対照的に、これから訪れるイベントに胸を躍らせている恋人達や、雪で真っ白になった路面ではしゃぐ子供達が見える。この季節になるといつも感じる寂しさと、微かな記憶の隅に眠る暖かさを思い出す。出されたばかりのホットコーヒーを啜りながら、視線の先にそんな事を思い描いた。  寒さで小さく縮こまる私自身が、家族という暖炉に寄り添う様にして冬をしのぐ。  私にとって家族というのは、きっとそうした特別でありながら極めて自然に存在する空気、はたまた私が片方の靴ならもう片方は家族であったりというような、至極当然にしてそこに存在する物だと言える。  一般的にどうなのかは解らないが。  そもそも一般論というのは多くの人間が、そう感じている、というだけの数の理論に他ならない。そうした数の理論に左右される民主主義とはまた別に、常識という数の理論が頭をもたげた。常識というのは多くの人間が思うこと、考える事を一般論として作り上げた規範だ。そうすべき、そうであるべきと声を挙げた者に賛同を募れば、なにかしらの違和感を感じていなければそれは常識となる寸法だ。結果少数派は淘汰され、良きにしろ悪しきにしろその慣習が受け入れられていく。
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