4人が本棚に入れています
本棚に追加
朝、カーテンを開けたままの窓から差し込む光に眉をひそめて起きる。
ピピピピピッ…スルスル…カシャッ
窓の外、隣り合わせの窓から、目覚ましを止めてスクリーンカーテンを開ける音がする。
昔から変わらないあの人の、幼なじみの平岡 近衛(ひらおか このえ)の習慣だ。
カラカラカラ…
「おはよ」
窓を開けて「おはよ」という。これは僕、上條 早矢(かみじょう さや)のずっと…昔からの習慣だ。
「おはよ。今日もいい天気だな。あ、そぉだ、早矢、今日学校終わったらちょっと付き合ってくれよ」
太陽よりも眩しく、青空より清々しい笑顔に目眩がする。
「スタバのチョコレートラテ」
「わかったよ。奢るから付き合ってくれ」
久々に構って貰える喜びに胸が高鳴って暴走している。
「学校帰りにメールするよ」
「おぅ。デート、よろしくな。」
「へっ?」
思わぬ言葉に、過敏に反応して、大袈裟に驚いて間の抜けた声を上げてしまう。
「デ、デート?!」
僕の驚いた様子を見て、一瞬驚いてぽかんとした顔をしてから、プッと吹き出す。
「お前その様子じゃ、キスもまだだな」
カァっと血がいつもの倍速で身体を走り巡る。
「自分がモテモテで彼女がいるからってヒトをからかうな!」
思わず窓をピシャリと閉め、夜に使われなかったカーテンを閉める。
「あぁ…やっちゃった…」
ズルズルとへたりこんで、今さっきの自分の態度と言葉に自分で傷つく。
「モテモテで彼女…、いるからって…て。モテモテは死後だろ…」
少しズレたツッコミで、必要以上に傷つかないための本能的な自己防衛をしながら感傷に浸りかけたとき、下から母の声が掛かる。
「早矢、起きてるの?」
「い、今行く!」
バタバタと着替えを済ませ、鞄をもって下に降りていく。
「もぅ、高校生にもなって朝もちゃんと起きれないの?」
「ちゃんと起きてたよ。こぉちゃんと話してたのっ」
「あんまり迷惑かけるんじゃないわよ、近衛くんだって大学生なんだから近所のお子様に構ってる暇、ないんじゃない?」
その大学生さまに誘われてお出かけするんだよ!
とは、言えずに、返事を返さずにご飯を食べ終え席を立つ。食器を流しにもっていくと、
「いってきます」
玄関を出ると上から声が降ってくる。
「メールしろよ」
「わかってる。」
初夏になった町を走っていく。
最初のコメントを投稿しよう!