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携帯で音楽を聞きながら10分ぐらい歩いていると、
ようやくじぃちゃんが経営している会社が見えてくる。
実は何度かここの道は通ったことがあり、なんとなくだが場所は覚えていた。
空は完全に日が落ちて少し明るいが夜が来ていた。
看板には大きく765と書いてあり建物の中から光りがちらほら光っている。
「…やべぇ、緊張してきた」
胸が自然に高まるのがわかった。
無理もない、なんせ会社に入るのはこれが初めてなのだから…
緊張してなかなか入れないオレは会社の外で音楽を聞きながら緊張が収まるのを待っていた。
それからさらに10分が過ぎ、ようやく緊張がなくなった。
音楽を消し、いざ中へと入ろうとする…
すると、中から二人の女の子が出てくるではないか。
オレはすぐに建物の影へと身をかくした。
「嬉しそうねやよい♪」
「だって何ヵ月ぶりのお肉なんですよぉ♪」
二人が楽しそうに話す。
所属のアイドルだろうか…
テレビはお笑い番組ぐらいしかみないので詳しくないが、二人とも可愛い。
「そこで話をされると行きずらいんだが…
よし、いってみよう…」
オレは勇気を出し、建物の影から出て会社の前へと足を運んだ。
「…あの、ここって765プロダクションでよかったのかな?」
知っているのにも関わらずどうしても聞いてしまう…
「はい、そうですよ♪」
ツインの可愛い娘が笑顔で答えてくれた。
「…そっか、ありがとう」
オレは作った笑顔で返す。
「あの、あなたは誰なんですか?」
作った笑顔が悟られたのか、
リボンを着けた可愛い娘が怪しそうにこちらを見つめる。
「別に怪しい者じゃ…」
その時、ちょうど会社からもう一人の女の子が勢いよく出てき、オレの横を走っていった。
「…ないから…」
彼女はすぐ走って行ったが、
オレの目にはスローで映し出された。その彼女の目に少しばかりの水が溜まっていたことまではっきりと。
「伊織ちゃん!」
二人の娘が叫ぶ
オレは無意識のうちにその娘を追いかけていた。
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