第一章 彼

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そして、シスターに呼びとめられれば「なんですかー?」と首を傾げて問い掛けてみた。 すると、シスターは神経質に眼鏡を押し上げつつ注意を呼びかけられたのだ。 「前々から貴女ははしたない事ばかり……それで良く此処へ入れた事! 以後廊下は走らないようにしなさいッ」 と言えば忙しそうにさっさと歩き出したシスター……篠理は「はーい」と言うも暫くすればまたパタパタと走りだし、何度も違うシスターに注意される繰り返しだった。 そして、何とかシスターの目をかい潜って目的の庭に着いたのだった。 「サキお兄ちゃん、居る?」 篠理は辺りをキョロキョロとしながら探していた……もしかすれば、帰ってしまってるんじゃないかと心配だったのだが案外あっさりと目的の青年、サキを見つけてしまった。 穏やかな風……夕日に照らされ、全面緑の庭に似つかわしくない黒ずくめのサキ。 篠理は待ってくれた事が嬉しくてサキに近付いていってサキの腕の裾を引っ張った。
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