12人が本棚に入れています
本棚に追加
何もない空虚の闇……
誰も居ない暗い静かな夜……
そんな静かな空間に突如電撃が走ったかのように、バチバチと音が鳴ると同時に、その周りの空気が凍りつきそうな程一気に冷たくなった。
キンッ
闇に響く無機質な音と共に空間に亀裂が走ると、それがぱっくりと口を開き、その中には闇よりも更に暗い、漆黒が溶け合うように渦巻いている。
その中から人間らしい手が一つ出てきたのだ。
手が亀裂の中から出てくれば、他の体の一部も前へと進み人間の体をした黒いモノが現れてきたのだ。
そして、役目を終えた亀裂はまるで、生きているようかのように、ユックリと閉じていった。
そして何事もなく再び静寂の夜が帰ってきたのだ。
夜に照らされた月の光が、突如現れた黒いモノを照らした……それは男であった。
その男はといえば紅い髪をしており、瞳は燃え盛る色……
男は黒い目深なフードをすっぽりと被っている為、顔や瞳は殆ど見えなくなっており、微かに照らす光に鼻などが覗くぐらいだ。
見ている限り中性的な面立ちで、髪は肩付近まであり、前髪などは少し欝陶しげにかかっている。
意外と華奢な身体をしており黒のブーツをはき、同じ色のフードとコートは長さが膝下まであるのだった。
男は一人、コツ……コツと音を鳴らして歩いている。
一人で……静寂な夜の中、音を鳴らせて---
最初のコメントを投稿しよう!