第一章 彼

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アイナとマルスが出て行けば皆散り散りとなり、それぞれ違う事をやり始めれば、篠理は一人教室を後にして廊下を出て、庭へと歩いている途中、溜め息を吐きつつ呟きながら髪に付いた黒板消しの粉を払っていた。 「はぁ……虐めなのかなぁ……うーん……でも、マルス君も本当は嫌な子じゃないと思うんだけどなぁ……アイナちゃんだって可愛いし」 とぶつぶつ言いながら庭へ着けば、空の雲を見ながら歩いていると、なにも無い筈の場所にコツリと躓いてしまったのだ。 躓いてしまうと少しビックリして慌てて、辺りをキョロキョロと見回してみたのだ……そして、篠理は何となく下を見てみれば、そこにある黒い塊に気づいたのだった。 晴れ渡る春の空にカサカサと揺れる緑の草……そこに、大人分ぐらいの大きい縦長の黒い塊が置いてあったのだ。 いや、それは黒い塊ではなく、黒いコートとフードを被った青年なのだと気づいたのだ。 どうやら、この青年の足に躓いてしまったらしい。篠理は恐る恐る側に寄り覗いてみれば、見知らぬ黒い青年は学校の庭で寝ているのが解った。 何故学校に先生以外の人がこんな所で寝転んで居るんだろう……と、篠理は興味津々に見ながらどうすれば起きるのだろうか、と思いその場に立ち止まっていたのだ。 しかし、青年はかなり熟睡しているのかピクリとも動かず死んだように眠っている。
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