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「あ、あった♪」
やっとポケットから目当ての物が見つかったのか、機嫌良さそうな笑みを浮かべて、そのポケットの中にある物を手の中へと握れば、相手の方に向けて手をパッと開いたのだ。
その手の中には赤、青、紫と、細長く丸みのある色のついた小さなお菓子が置いてあった。
「これはね、ビーズンって言うお菓子なの……甘くてすっごく美味しいんだよ!! 赤いお兄ちゃんお腹空いてない……?あげるよ?」
「……いらない……」
青年は少し面食らっているが、表情の見えないフード越しでボソリとぶっきらぼうに答えたのだ……
「赤いお兄ちゃん! お腹空いてる時はね、イライラするんだって……だから、いっぱい食べなきゃダメだってパパが言ってたよ?」
と、サキの返事に大して気分を害した風も無く透き通るような翡翠の瞳で相手を見つめて言った。
青年は少したじたじとしていつまでも躊躇しており、それに引き下がらない少女に苛立ちを覚え篠理を睨み付けて言った。
「いらないって言ってんだッ--グルルルゥ~…!」
青年は篠理の手の上に置かれたお菓子を振り払おうとした瞬間、青年のお腹から大きな音がなったのだ。
男はシンと黙り込み恥ずかしいやら何やらで困ったような様子が伝わってきた。
「ほらッやっぱり赤いお兄ちゃんお腹空いてたんだね!」
にぱっと笑って篠理は一つビーズンを取ると返事を待たずに笑顔で男のフードの中へとビーズンを突っ込んだのだった……
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