困惑

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    誰にも見つからないように屋上へと向かうのは思ったより簡単だった。 もともと生徒は立ち入り禁止なので誰も通らないからだ。   それでもやはりいけないことをしている罪悪感からか、京は自然と忍び足になっていた。     都ちゃんと來斗くん…落ち着いたら絶対話すからね…     心配してくれた二人を思いながら、静かにドアを開ける。     『…はあ…』   手すりに腕をかけ、景色を一望する。   …確か小・中・高一貫の私立学校なんだよね。あそこでりっちゃんは働いてる…     広い敷地内に見える高校とは違う校舎を見つめた。     <愛してる。妹としてじゃなく、一人の女の子として>     律の言葉が鮮明に耳に残っている。息づかい、微妙な声の震えまで。 京は座り込んでしまった。     『…どうすれば良いの?…兄妹なのに…っ』     「律になんかされた?」     背後からいきなり声がかかった。 びくっとして振り返ると、微笑を浮かべた淳希がいた。     『せんせ……何でここにいるの?』   目を丸くする京の目の前にしゃがんだ。   「サボりー。京もだろ?たりいよな授業」   『注意しないんだ』   「人のこと言えないもん俺。…で?兄妹なのにって、律になんかされたの?」     京は軽く淳希を睨んだ。   …元はといえばこの人が原因…   「なになに、睨んじゃって。俺の昨日のアレのせいなんでしょ? 律のシスコンぶりもすごいもんだからさ、ちょっと挑発してみたんだよ …そしたらまあ…ここまでとはね」     淳希の目が京の髪でかくれかかった紅い痕を捉えた。   『…?てか…あれやっぱりわざとだったんだ!せん…、あ、あつきのせいであたし…っ』     淳希の視線が分からない京。そして泣きそうになり、俯いた。 淳希は少し真剣な表情で言った。     「話しとそれから推測するに、告白された?」   かああっ   赤くなる耳。   『先生っお願い!水瀬先生と都ちゃん達には言わないで!』     ぱっ と顔を上げ懇願する京にどきっとした。   上目遣いの涙目なんか見慣れたはずなのに。   京の頬を優しく触った。     「…言わないよ。律は友だちだし。それに京は俺らの生徒だし」    
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