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心臓がすごい早さで脈打っている。
律の考えていることが分からなくて、恐くて…
京は必死に涙をこらえ、笑った。
『っ今日はもう帰るよ!りっちゃん過保護だから私がすぐに帰ってこないと心配するから…だから早く帰らないと怒るかもだから』
軽くパニックを起こしかけている。淳希はとっさに京の頭に手を伸ばした。
「…京、落ち着いて。大丈夫だから泣くな」
優しく頭を撫でる淳希に思わず涙が零れる。
『…は、…初めてだからこんなこと…混乱しちゃって』
淳希の一言で緊張が少しほぐれた様子だった。
無意識に口角が緩む。
「京、落ち着くまでここにいろ。不安ならぶちまけて良いから」
柔らかな笑顔にどき、と心臓が跳ねた。小さく俯き、ありがとう、と囁いた。
…――
「…京」
どうして電話もメールも反応してくれないんです…
繊細な性格の京だ。昨日のことで考えこんでいるに違いない。朝も話せなかったせいで、余裕がなくなっていた律。
「今どこで何をしてるんですか…?」
早く声が聞きたい。顔を見たい。
仕事は終わった。家にいるのかもしれない。…けれど、何故か高校の方に気が向く。
「高校を見てから家に帰るか…」
律は渡り廊下を走り出した。
…――
「はい終わり」
たつきは早口に言うとプリントを水瀬の前に突き出した。
「おー。…うん、おっけ。ラスト数学ね」
面倒くさそうにプリントを受け取ると、たつきは來斗を見た。
「なあ…あの子遅くないか?」
「京のこと?あー、うん…そういやそうだな」
ケータイの画面を確認する來斗。
「淳希…何もしてないよね」
不安になったのか都が呟く。
「あいつは面倒事が嫌いだから生徒には手ぇ出さねえよ…多分」
がたっ
「…たつき?」
席から立ち上がりドアに向かう。
水瀬は煙を吐くとげんなりとした顔をした。
「早く帰りたいんだが…」
たつきがドアに手をかけようとした時、向こう側からドアが開いた。
「!」
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