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「え?」
目の前に、スーツを着た整った顔立ちの男が立っていた。
思わず間の抜けた声を出したたつきに、教室にいた3人は入り口を見た。
ぽろっと手に持っていたたばこを落とした水瀬。
「…律」
「えっ水瀬知り合い!?」
京ちゃんの兄貴だよね?と都に小声で言う來斗。
「悠…京の担任だったんですか!」
ふわっと笑った律に教卓から立ち上がり、頭をかきながらたつきの隣に来た。
「大学以来だな。ったく先輩なんだから呼び捨てすんなよ」
苦笑する律に首を傾げた水瀬。
「で、何の用よ?お前小学生教えてんだろ?…あ、京か」
思いたったように指差した水瀬。たつきは微かに反応した。
「そう。電話に出ないんです…靴箱を見てきたらまだ靴があったので。
どこにいるか知ってますか?」
しまった。
水瀬は表情を崩さず考える仕草を見せた。
「こいつらと一緒に帰るって言ってたんだがこいつが補習くらって。
今さっきトイレに…」「え?違うでしょ。あのバカに呼び出しされたんだよ?」
都は水瀬を見た。ばか。口をぱくぱくさせた水瀬にまゆを寄せた。
「な…」
「バカ?先生に呼び出されたんですか?」
にこやかな律に少し頬を赤らめ頷いた都。
「はい。保健医の淳希っていうバカにケータイ取られたって…」
あー。都め…察しろよなぁ。
大して焦ってなさそうに床を見つめる水瀬。
「悠。淳希とは、あの淳希ですか?」
「あっタバコ床に落ちて」
「悠」
逃げようとした水瀬の肩を掴んだ律の笑顔はどこか冷たかった。
ため息をつく。
「そう!お前の大っ嫌いな淳希。ここの保健医やってんの」
それを聞くや、走り出した律。
「なっ何!?水瀬、あの人っ」
「あいつ保健室の場所知ってんのか…?」
しかめっ面をしながら、水瀬は歩き出した。
「…保健室に?」
ついて来たたつきに頷く。
「あいつ淳希のこと嫌いだから殺しかねん。それはめんどくさいことになるから阻止!」
ねっ とタバコを新しく取り出す水瀬に呆れながらも足を早めたたつきだった。
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