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午後は緩やかに時間が過ぎていった。
すっかり仲良くなった都と來斗とこそこそと授業中におしゃべりしたり、うとうとしたり。
ふと、後ろを振り向いて來斗と話している時に気づいた、來斗の隣の空席。
『そこ、誰の席なの?』
眠そうに答える來斗。
「昼休み話してたたつきって奴の席。…嫌みな奴だよー、成績優秀スポーツ万能更には容姿端麗ときた」
「來斗でも四字熟語知ってるのね」
横からケータイをいじりながら口を出す都にべっと舌をだす來斗。
「俺、現国得意ですからっ でね、学校来なくても別にエスカレーター式で大学行けるからかあいつ全く学校来ないんだよ」
そんなパーフェクト人間いるんだね、と言いながら京は周りを見渡した。
何人かの生徒がさっと視線を逸らした。
『…?』
「気にしないで」
ふっ と笑って都がケータイを閉じる。
「あたしらね、ここで御三家って呼ばれてて自分で言うのもあれだけど、結構有名人なの」
「俺ら顔良いからさー」
威張る様子もなく、素で言っている二人に嘘は見えなかった。周りの生徒は遠巻きに見ている程度で、都や來斗が何かするごとに小さく黄色い声をあげている。
アイドルみたい。こんな人達と一緒にいて良いのかな?
『あたしみたいなのが、そばにいていいのかな…』
心の呟きは声に出ていた。二人が京を見つめている。
「…あたしさ、実は仲いい人いないの」
ぽつりと零す都に驚く京。
「本とよ?見た目も派手だし地毛は赤いしで、友だちは來斗とたつきって奴だけだった」
だんだんと周りは帰宅の途についていく。
「イジメとかはなかったけど、心の内を話せる同性の友だちがずっと欲しかった…
そんなときに京がきてね、御三家のこと知らないから距離おかれないうちにこっち側に引き込もうって思って…」
自嘲ぎみに笑う都。
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