2327人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなに弱い女じゃない。と、力説したところで彼は笑って流すのだ。
『藤森は君を幸せにできない』
裕が言った言葉が反芻して、そうなのかもなと納得した。
「目ぇ、覚めたか?」
いつの間にか、ベッドに腰掛けていたのは、夫ではなく、長谷川だった。
物音を立てずに近づくのは、獣が故の習性なのだろう。
「バレたって?」
こくりと頷くと、長谷川は苦笑いをしながら、立ち上がった。
「ま、しゃあないな。一真の野郎あんたのことになると殊更、周りが見えなくなるから」
「一真は?」
「まだ、仕事だ。あんたに逢いに、ヴラドがきてたんだが、それを昨日の騒動でうやむやにしちまったからな。謝罪にいってるよ」
いくら無知な茜でも、ヴラドぐらいは聞いたことがある。
最初のコメントを投稿しよう!