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気がついたときには、自室のベッドの上にいた。
こんなシュチュエーションが何度あっただろうか。
多分、その中のどれよりも目覚めが悪い。
唇をなぞって、何故か悲しみが込み上げてくる。あんな激しい口づけは初めてだ。
いや、経験がないわけじゃない。まだ、一真を好きだと自覚する前、彼が本能のまま貪るように、口づけられたことがあった。
あの時と同じ。
畏怖と怖いぐらいの甘さ。いっそ蕩けてしまうんじゃないかというような甘美さは、息苦しさと相俟って、絶妙に精神を侵していくようだった。
必死にあがなおうと、抵抗するが、一真の目と髪の色が変わるのを確認して、無理だと悟った。
何が彼には気にくわないのか、あるいは、何がいやなのか……。
彼と衝突することは多々あるが、いつも彼に軍配が上がる。
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