喧嘩

20/23
前へ
/294ページ
次へ
**** 気がついたときには、自室のベッドの上にいた。 こんなシュチュエーションが何度あっただろうか。 多分、その中のどれよりも目覚めが悪い。 唇をなぞって、何故か悲しみが込み上げてくる。あんな激しい口づけは初めてだ。 いや、経験がないわけじゃない。まだ、一真を好きだと自覚する前、彼が本能のまま貪るように、口づけられたことがあった。 あの時と同じ。 畏怖と怖いぐらいの甘さ。いっそ蕩けてしまうんじゃないかというような甘美さは、息苦しさと相俟って、絶妙に精神を侵していくようだった。 必死にあがなおうと、抵抗するが、一真の目と髪の色が変わるのを確認して、無理だと悟った。 何が彼には気にくわないのか、あるいは、何がいやなのか……。 彼と衝突することは多々あるが、いつも彼に軍配が上がる。
/294ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2327人が本棚に入れています
本棚に追加