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どれくらい眠ったのだろう。
時の感覚が分からなくなるくらい、僕の身体は昏睡していた。
僕は自室ではなく、和室に寝かされている。
この場所は静かで、父も好んで使う場所だった。
「──真。侑真」
体を揺すられ、頭上で名前が呼ばれている。
「駄目です。起きません……」
「小桜、そう焦るもんじゃない」
微かに聞こえるのは父と小桜の二人の声。
心配そうな顔をした小桜が目に浮かびそうだ。
父の声音も幾分低く感じる。
目を開けたくても、何故か開けれない。
このもどかしさに、僕は苛立ちを感じた。
(お父さん、小桜……)
心で声に出しても二人には通じず、僕の中に戻るだけ。
少しでも体を動かそうと試みるが、金縛りのようにピクリとも動かない。
シーンという静寂の音が鳴り、しばらくの間それが続いた。
聞こえるのは、時計の規則正しい針の音だけ……。
「そろそろ、良いだろう」
意外にも、その静寂を最初に打ち破ったのは父だった。
小桜はキョトンとした顔で彼を見上げる。
そんな小桜にニッコリと笑い、
「──侑真、起きなさい」
柏手を一つ、打ち鳴らした。
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