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柏手が部屋中に響き渡る。
それに導かれ、音が鳴り止むのと同時に僕は目を覚ました。
「侑真……!!」
小桜が目元にうっすら涙を浮かばせている。
「……小、桜……」
「本当に良かった……。四日も目を覚まさなかったんですよ?」
彼女の目から、涙が一筋零れ落ちた。
心から心配してくれていたことに、僕は深く感謝の念を抱く。
そして、小桜に支えられながら体を起こし、父の方を見た。
「遅よう、侑真。深い眠りから漸(ヨウヤ)く目覚めたか」
そう言って僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。
父は悪態を付くものの、撫でてくれる大きな手は温かい。
そして、いつもの寛容のある笑顔で僕を見ていてくれる。
存在と安心感を与えてくれる父に、僕は自然と涙が零れた。
零れた涙に小桜が咄嗟に渡してくれたハンカチで涙を拭う。
その間も父は頭を撫で続けてくれた。
改めて、父や皆の存在に感謝した時だった。
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