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ボーン、ボーンと鐘の響きがいつも以上に強く聞こえるのは気のせいだろうか。
鐘は数回鳴ると止まり、シンとした静寂が部屋を包む。
その静寂さが僕を少しだけ不安にさせた。
「……父さん?」
父の方を見ると、ニコリといつもの笑顔を見せてくれる。
そして、
「十六歳の誕生日おめでとう」
そう言うと、力強く僕を抱き締めてくれた。
父の強すぎる抱擁に驚くが、恥ずかしいなどの感情を通り越して、嬉しさが溢れる。
この世に生まれて、そして父の息子で良かったと。
そう、強く実感した。
しかしその笑顔は直ぐに消え、真面目な顔に変わる。
「侑真、これから話すことを良く聞きなさい」
いつもより低い声で話す父に、僕の体は自然と強張った。
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