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スッと父の手が襖を指す。
「小桜、襖を」
「はい、旦那様」
父に言われたとおり、小桜は襖を開けた。
そこには家を囲む塀と、何の変哲もない庭の一部がある。
外に何があるというのだろう。
訳が分からず、家の中に視線を戻そうとした瞬間──。
ギョンッ!
「……へっ……?」
人ではない何かが、塀から僕達を睨んでいた。
さっきまで、塀には近所の野良猫の姿はおろか、何もいなかったはず。
しかも、その一匹だけではなく塀の周りに無数といる。
ザワザワ、ゾワゾワと異形のモノが動き回り、僕達をじっと見ていた。
塀の所から中には入って来れないらしく、ギョロギョロと無数の目が動いている。
「あれは、妖(アヤカシ)……?」
今まで、奴等の存在を薄々感じ取ることは出来ても、視えはしなかった。
それが今、何故かはっきり奴等のことが視えている。
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