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「そう、妖だ。だが、案ずるな」
チラリと父の視線の先を追えば、一匹の子鬼らしき妖が庭の中へ侵入しようと試みている。
爪の尖った細い指先が、庭の中へスッと手を伸ばした。
「と、父さんっ。子鬼が庭に──」
パァンッ!
僕が言い終わる前に子鬼が弾け飛ぶ。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
サラサラと子鬼の破片が風に流れて消えていく。
「だから、案ずるなと言っただろう?我が家の周りには奴等が入って来れないように結界が張ってある」
クシャクシャと僕の頭を撫で、父は笑った。
(初めからそう言ってくれれば良いのに……)
父の目論見にまんまとはまり、悔しさが生まれる。
はははっと父は高笑いするとポンポンッと僕の頭を軽く叩いた。
そして、「侑真」と僕の名前を呼ぶ。
「早速、話をしよう。我が一族の能力や使命については知っているな?」
「はい、父さん。──いえ、当主」
『改まった場面では、たとえ身内であってもそれ相応しい呼び方をせよ』
これは、物心付く前から言われていたことだ。
いつの間にか身に付いていたらしく、すんなりと抵抗なく言葉が出る。
「十六の誕生日を迎えた今、お前の潜在能力が覚醒された。だから、今まで薄々しか感じることの出来なかった妖をその目で視ることが出来る」
だから妖をはっきり視ることが出来たのかと僕は納得した。
「そのためにな?」と父は僕の方を向く。
何やら小桜と目配せをし、後ろで僕を支えている小桜はコクリと頷いた。
「侑真お前に使命を与えよう」
凛とした声で、父は僕にそう告げた。
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