*第一話*桜花を鎮静せよ!

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父の声が部屋に響く。 どんな使命が僕に課せられるというのだろうか。 背中に一筋の汗が流れ、僕はゴクリと唾を飲む。 緊張する体と共に、僕は父の言葉を待った。 スゥッと父が息を吸い、 「侑真。妖となった染井吉野の桜花精を鎮静し、己の力を見せよ」 そう、僕に言葉を放った。 「えぇっ?!鎮静ですか?!」 「……声が大きいぞ、侑真」 すみませんと咄嗟に口に手を当て、口を閉じる。 口を閉じれば静寂が部屋を包み、不安という重圧が僕に圧し掛かってきた。 ドキン、ドキンと心臓が強く脈を打つ。 (……僕が……桜を……?) 今し方、妖をちゃんと視れるようになったばかりだ。 果たして僕に、妖となった古い桜花精を鎮静出来るのだろうか。 古きモノ程、威力は強いと言う。 しかもあの染井吉野には人を襲ったという話も噂だが聞いた。 それに、身をもって妖花の妖気に中(ア)てられたのだ そう考えると、だんだん怖くなってくる。 不安と恐怖から僕は黙ってしまった。 そんな僕を安心させるように、ギュッと後ろから抱き付かれる。 「そんなやる前から不安がっても仕方ありません。初めは誰でも怖いものです」 「小桜……」 振り向けば小桜が微笑んでいた。 その言葉を聞いて、圧し掛かっていた不安が少しだけ軽くなっていく。 なでなでとやんわりと頭を撫でる感触が、ゆっくりと不安を解きほぐしていった。
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