24人が本棚に入れています
本棚に追加
父の声が部屋に響く。
どんな使命が僕に課せられるというのだろうか。
背中に一筋の汗が流れ、僕はゴクリと唾を飲む。
緊張する体と共に、僕は父の言葉を待った。
スゥッと父が息を吸い、
「侑真。妖となった染井吉野の桜花精を鎮静し、己の力を見せよ」
そう、僕に言葉を放った。
「えぇっ?!鎮静ですか?!」
「……声が大きいぞ、侑真」
すみませんと咄嗟に口に手を当て、口を閉じる。
口を閉じれば静寂が部屋を包み、不安という重圧が僕に圧し掛かってきた。
ドキン、ドキンと心臓が強く脈を打つ。
(……僕が……桜を……?)
今し方、妖をちゃんと視れるようになったばかりだ。
果たして僕に、妖となった古い桜花精を鎮静出来るのだろうか。
古きモノ程、威力は強いと言う。
しかもあの染井吉野には人を襲ったという話も噂だが聞いた。
それに、身をもって妖花の妖気に中(ア)てられたのだ
そう考えると、だんだん怖くなってくる。
不安と恐怖から僕は黙ってしまった。
そんな僕を安心させるように、ギュッと後ろから抱き付かれる。
「そんなやる前から不安がっても仕方ありません。初めは誰でも怖いものです」
「小桜……」
振り向けば小桜が微笑んでいた。
その言葉を聞いて、圧し掛かっていた不安が少しだけ軽くなっていく。
なでなでとやんわりと頭を撫でる感触が、ゆっくりと不安を解きほぐしていった。
最初のコメントを投稿しよう!