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……という経過があり、今現在に至る。
振り返れば無茶苦茶な、厳しい修行だった。
学校が終わり、家に着いた時点で鬼火が飛んで来る。
訳の分からない妖に土埃をかけられもした。
なにより、あんなに生き生きと楽しそうに稽古をつける父を見たのが初めてだった。
修行云々のことは、次の機会に話したいと思う。
僕は気を引き締め、目の前にいる桜花精を見据えた。
『──小物風情の術使いめ』
「小物かどうか確かめますか?」
事前に校庭内を結界で張り巡らせていたため、大きな騒音も外には聞こえないし、中で何が起こっているのかも分からない。
右手で手印を組み、左手で懐から呪符を数枚取り出した。
僕を囲むように呪符を空中へと浮かべる。
一歩ずつ前へ進む度、桜花精の妖気が威力を増して息苦しさを感じた。
気持ちの悪い風が体を吹き抜け、額に脂汗が浮かぶ。
「破陣(ハジン)っ!」
『?!』
呪符を桜花精へ飛ばし、桜花精と樹木本体に張り付けた。
「縛!」
呪符が動きを封じ、妖気を吸い取っていく。
『……おのれっ……』
ギリギリと呪符が桜花精を締め付けるが、呪符を取り払おうと桜花精は抵抗する。
微々たる動きでも、少しも気が抜けない。
抜いたら呪符を跳ね返され、我が身が危険に晒されてしまう。
そうならない様、僕は精神を集中し手印を堅く組み直した。
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