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それから、四之宮さんはポツリ、ポツリと少しずつ続きを話す。
一方、僕は席から立ち上がり、教卓前にあった丸椅子に腰掛けた。
万が一のことに備え、湊都さんの傍にいたほうが良い気がする。
僕の行動に湊都さんは了承を得たように頷き、四之宮さんに視線を向けた。
「お母さんが死んで、幼いながらにも私だって悲しかった。それに、お父さんがお母さんの名前を呼びながら泣いて、遺体に抱きついている姿は忘れられないのも」
……悲しい、悲しい。
何で大切な貴女が死んでしまったんだ。
何故、俺達を置いて逝ったんだ?
逝かないで、逝かないで……逝かないでくれ!!
「……っ!」
四之宮さんのお父さんが、悲しみに暮れる姿が目に浮かんでくるようだった。
大切な人が死んで、悲しみに暮れない者はいない。
ああすれば良かった、こうすれば良かったのではないかと後悔が付きまとう。
傍にいる湊都さんも目を伏せ、表情は暗かった。
「……でもね、お父さんはお父さんじゃなくなった」
ピクッと湊都さんは何かに反応し、顔を上げる。
「お父さんは私が成長する度に、お母さんの面影が残る服や私物を着せていくの!始めはハンカチやポケットティッシュカバー。お母さんが結っていたリボン……」
「ご両親は……とても仲がよろしかったのですね……?」
僕がそう声をかけると、一度荒げた声を戻してこう言った。
「お父さんとお母さん、幼稚園からの同級生だったって聞いたわ。お父さんとお母さんは赤い糸で小さい頃から繋がっていたのよってお母さんが良く話してた」
ポタリ、ポタリと四之宮さんの目から溢れた雫が落ちていく。
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