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それから、彼女が成長していく度に彼女のお父さんはお母さんの服を着せていった。
しまいには……。
「最初は私も気付かなかったの。お母さんの形見を持ってるんだってくらい」
グッと四之宮さんは拳を顔の前で握り、わなわなと震える。
「でも、お父さんは違った。私をお母さんの代わりにしていたんだわ。私の名前を呼ぶの。でもそれは私のさくらではなく、お母さんの『桜』だった」
さくら。
さくらは本当にお母さんに似ているんだね。
さくら、さくら……桜。
「大好きだったお父さんとお母さん。でも、私は私なのに――!!」
そう四之宮さんが叫んだ瞬間――。
「?!」
四本の蝋燭が一気に消え、視界が真っ暗になった。
見える光はただ一つ。
青年が炊いているお香の僅かな光だけだった。
真っ暗になった空間の中、僕達は息を潜めてこれから起こるであろう事態に備える。
僕は護符や呪符を潜ませ、湊都さんは青年に目配せしていた。
一方、四之宮さんは壊れた人形のように言葉を吐き出す。
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