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地面から数十センチのところで僕の体は浮いていた。
「あっぶねぇ……」
窓から身を乗り出していた湊都さんが安堵の表情を見せる。
そして、窓を蹴り僕の隣に降り立った。
片膝を付き、僕の様子をうかがう。
「大丈夫、じゃなさそうだな」
「っ、すみません……」
僕は上体を起こし、湊都さんを見る。
自分自身が情けなくて、自己嫌悪に陥った。
しかし、そんな感傷に浸る時間はないと身を持って知らされる。
割れた窓ガラスから悪しき物が飛び出し、校庭を走った。
一直線に、迷いもなく。
「しまった!桜だ!!」
視聴覚室から見える風景には桜があった。
そして今は夕刻。
話し始めてからかなりの時間が経過している。
もう日は落ち、薄暗さが増していた。
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