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──ニ週間程前。
それは僕、依咲侑真が県立神條高校に入学した後の四月の中旬。
今日は週の始めの月曜日で、外は暖かい陽気に包まれていた。
玄関に向かう廊下の途中、庭の桜が僕の目に入る。
僕の家は古風な木造建築で、今風の家とはちょっと違う。
庭には嗜(タシナ)み程度の庭園があって、梅や桜などの季節の木々が植えられていた。
「あっ、桜が……」
見事満開に咲いていて、心地良い朝だった。
「では、行って参ります」
「侑真」
丁度、玄関の戸を開けようとしたとき、見送りに出て来た父に呼ばれた。
何だろうと父の方を見やる。
「侑真、よーく学校を見てきなさい。特に、古い染井吉野をな」
「桜を?はい、お父さん」
「気を付けて行っておいで」
ニコリと寛容のある笑顔で、僕を見送る父。
「?はい、行って参ります」
それを直ぐに理解することは出来なかったが、僕は取り敢えず学校へ向かうことにした。
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