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「さくらは」
着くなり四之宮さんのお父さんは湊都さんの肩を掴んで問う。
相当急いで来たのだろう。
額には汗が浮かび、息が乱れていた。
「思った通りだ」
「え?」
湊都さんは背中に隠してあった呪符を抜き取り、言葉を紡ぐ。
次第に四之宮さんのお父さんは表情が歪み、頭を抱えた。
体から黒い瘴気が溢れ、ブルブルと激しく震えだす。
その体に呪符を張りつけ、湊都さんは「浄化」と唱えた。
黒い瘴気が霧状と化し、瞬く間に消えていく。
そして背後にいた霊は、黒から浄化された白へと変わり湊都さんを悲しげな目で見つめていた。
「四之宮の、母親だな?」
そう湊都さんが話しかけると、霊は頷き涙を流す。
今にも消えそうな声で、湊都さんに何かを伝えた。
その言葉に湊都さんは目を伏せ、手印を結び言葉を紡ぐ。
「……――永久の安らぎを彼の者に与え給え」
最後の一文を読み終えると、四之宮さんのお母さんは姿を消した。
それから数分後に、四之宮さんのお父さんは目覚める。
先程の記憶は曖昧で、湊都さんは貧血で倒れたのだとそう告げた。
四之宮さんのお父さんが目覚めるのと同時に僕が目覚め、湊都さんと目が合う。
「もう大丈夫、です」
「……分かった。さくらさんはこちらです」
僕に支えられている四之宮さんを見るなり、四之宮さんのお父さんは駆け寄った。
ギュウッと力強く抱き、はっきりとした声で四之宮さんの名前を呼ぶ。
そして今に至るのだ。
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