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僕と湊都さんは残った仕事を片付けるために、桜花精の前に立つ。
傷付いた樹体に塩水と御神酒をかけ、護符を貼った。
原因となった瘴気は見えないほどに薄れている。
数日後には霊力も回復し、元通りの桜花として咲き誇るだろう。
「これで大丈夫だと思います」
僕がニコリと笑いかけると、応えるように桜花精も笑った。
『……有難う、小さな術使い達』
「やっぱりついで扱い……」
そんな湊都さんを見て、僕と桜花精はクスリと笑う。
「さて、帰りましょうか」
湊都さんは返事を返さなかったけど、スクッと立ち上がり頷く。
いつの間にか青年が横にいて、僕の鞄を差し出した。
「有難う御座います」
ペコリとお辞儀をすると、礼儀正しく青年も返してくれる。
「行くぞ」
「はい」
僕は桜花精にお辞儀し、湊都さんの横を歩いた。
「仕方無ぇから途中まで送る」
「え、いいんですか?」
「あぁ」
帰り道、僕と湊都さんは他愛も無い言葉を交わして夜道を歩く。
空には三日月が浮かび、一片の花びらが風に吹かれ舞っていた。
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