*第一話*桜花を鎮静せよ!

58/58
前へ
/84ページ
次へ
*1.5話*終わり良ければ 鎮静後、僕が家路に着いたのは十九時を過ぎた頃だった。 「鎮静は出来たみたいだな」 夕食を食べ終えた僕に、父は話しかける。 縁側に腰をかけ、お気に入りの扇子をパチンパチンと鳴らしていた。 「はい、なんとか。でも、まだまだ力不足で」 「そうかそうか」 一瞬、父の口角が上がる。 僕はそれを見逃さなかった。 きっとあれは笑いを隠しているか何か目論見がある証拠。 確固たる確信を持てるのは――。 「小桜」 「はい、ただいま」 そう、これが確信を持てる理由。 小さい頃から父が何か目論むと、必ず小桜を呼んでいた。 ヒソヒソと耳打ちをし、小桜の目元がほころびる。 見慣れた光景。 「ならば今から修行だな」 「はい!今から…………」 (……………………今から?) 思考回路がショートし、上手く理解できない。 今から?修行? 休みたいなんて考えは甘えなのでしょうか? 「あの、お父さ」 「今度は子鬼に協力してもらいますか?」 「あの」 「おお、名案だな小桜!」 そんな僕をよそに、二人の世界が作られていく。 以前に華を飛ばし、会話をしていたのはいつだったかな……。 諦めかけた矢先、ポンっと頭に手を置かれる感触がした。 見上げれば父が優しく笑っている。 「冗談だ。今日は早く寝なさい」 なでなでと撫でられる感触が心地よくて。 緊張が解けたのか、僕の瞼はゆっくりと落ちた。 父の体温、鼓動が僕を眠りへと誘う。 「次回は前回よりスパルタだな」 「……」 ……最後の一言は聞かなかったことにしておきたい。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加