*第二話*雨夜、燐火灯る時に

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結局、俺は友人(仮)という子犬に負け頼みを聞くことになった。 問題の頼み事というのは、「しばらく一緒に登下校して欲しい」というもの。 早速、頼まれた当日の放課後、一緒に帰ることになる。 「あ、雨だ」 (……最悪) 朝は晴れていたのに、雨雲が雨を呼び地上を濡らしていく。 天気予報は晴れを指していたが、今は梅雨時。 鞄に常備していた折り畳み傘を広げ、生徒玄関を出る。 ふと隣にいた気配が無いのに気付き、後ろを振り返ると……。 「傘、忘れちった☆」 テヘッとカワイ子ぶる友人(仮)。 殺意も芽生えたが、いつまでもこんなとこにいても埒があかない。 俺は盛大な溜め息を吐き、右側に友人(仮)をいれた。 「サンキュ、靜!」 二カッと笑う友人(仮)に対し、俺は複雑な気持ちになる。 (男と相合傘なんて……) 泣きたいような、叫びたいような。 人生初の男同士の相合傘に、俺は鳥肌が立つのを感じていた。
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