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シトシトと降る雨はそれほど強いわけでもなく。
しかし、小さい折り畳み傘に男二人だと外側の肩が濡れるのは必然だった。
「雨、止まねぇな」
「そうだな」
左に自分、右に友人(仮)が並び、普段通り通学路である帰路を二人して歩く。
暗すぎず、だけど明るくもない夕方の時刻は何となく雰囲気が重い。
「ほんと、靜と家が隣で良かったぜ。やっぱり持つべきものは幼馴染だよな」
犬っころみたいに顔を破顔させ、笑う。
先程から友人(仮)と表現していたが、彼の言う通り彼とは幼馴染だ。
しかも家は隣。
軽く彼を紹介するなら、名前は成瀬秋(ナルセ アキ)
アキ、と俺は彼を呼んでいて。
幼稚園、小学校、中学校、高校と十年以上も続く腐れ縁者。
美術部と書道部の兼部で文学に勤しんでいる学生、といったところだろう。
幼い頃から秋とは一緒に登校していた。
朝夕一緒に登校しないのは、どちらかが先に学校に行くか、秋が寝坊するかだ。
登下校を一緒にしなくても、(嫌でも)教室で会える(クラスが一緒だから)
そして今日の朝は秋の方が早く家を出て、学校に向かったらしい。
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