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雲行きが怪しい。
ザァッと気味の悪い風が吹き抜ける。
…………っ……ひっく……
「な、なんか泣き声っぽいのが聞こえ……」
「……面倒臭い……」
チラリとアキとポケットに入っていた携帯を見やる。
サイドボタンで時刻を確認すると、十六時三十分を回った頃。
徐々にだが、アレが集まりつつある時間帯だ。
しかしアレとこの泣き声の関連性はまだ分からない。
未だ電柱を凝視している秋に声をかけた。
「アキ」
視線だけこちらに向ける秋の表情は怯えきっている。
怪談だのホラーだの一般なものには恐怖を感じないくせに、秋は勘が鋭い。
霊媒体質、というかそういう類に秋は敏感だ。
「靜、アレ……」
電柱には黒い影がいた。
「(せっかく気付かないフリしてたんだけど)」
秋が気付いてしまったのは仕方がない。
傘で前方を隠し、グイッと秋の肩を引き寄せて耳打ちする。
「いいか?前を歩くことだけに意識を集中。面倒なことになりたくないだろ?」
コクコクと隣で頷く秋の腰に手を添える。
秋の足が小刻みに震えていることから、足がすくんで前に進めないことが予想出来た。
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