24人が本棚に入れています
本棚に追加
「行くぞ?」
秋がコクリと頷く。
一歩足を踏み出し、地面に着くのと同時に俺はオンという言葉を呟いた。
けれどそれは言葉に出して言うのではなく、口の中だけ。
空気のように。
通り抜ける風のように。
(何も考えるなよ、アキ)
何事もなく通過できることを祈りながら、秋の腰を押して前に進んだ。
足早に、かつ自然体に電柱の前を通過していく。
そして、そのまま電柱から百メートルくらい先まで無言で歩き続けた。
「……もういい、かもな」
そっと俺が呟くと、隣から盛大な溜め息が聞こえる。
電柱からはかなり離れた。
きっと振り返っても、小さくしか目には映らないはず。
だが、まだ気配は消えてない。
残った瘴気が体にまとわりついていた。
「し、靜……平気そう?……はぁ、怖かった~……」
困ったように苦笑する秋に軽く頷きながら、俺は気を張り巡らせる。
最初のコメントを投稿しよう!