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彼女の正体は桜の精だ。
僕の庭で満開に咲いたあの桜。
もっと詳しく言うと、彼女は式神でもある。
式神とは陰陽師が使役する鬼神等のことで、人心から起こる悪行や善行を見定める役を担っているもの。
何故、式神が僕の側にいるのか。
それは僕の家が代々陰陽師の家系だから。
そして、今もそれを生業としている。
裏では依頼一家と呼ばれ、父が今の現当主だ。
陰陽師の家系ではあるが、陰陽師とは名乗らず退魔師として闇の世界に籍を置いている。
何故そうなのかという詳細は僕でさえまだ知らない。
「小桜は父さんの式でしたね」
主人の言い付けは絶対だ。
大方、聞かれても答えるなと言われたのだろう。
(父さんには適わないよ……)
父という存在の大きさに、思わず溜め息を吐いた。
「侑真も父君みたいになれますよ。あの方の息子ですから」
ソッと軽く肩に手を回し、小桜は僕の頭を撫でる。
「そうかな?」と呟けば、小桜はニコリと微笑むだけだった。
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