*第二話*雨夜、燐火灯る時に

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瘴気は近い。 そして、異様に充満しているように感じた。 例えるなら、鞄の中にお菓子を入れて鞄中にお菓子の臭いが染み付いた様な。 近すぎて瘴気の元が掴めない。 ギュッと目を瞑り、意識を集中させる。 「靜?」 心配そうな声音で話しかけてくる秋。 (瘴気は秋の) ………………右側……? バッと秋の右側に目を向ける。 驚いて目をパチクリさせる秋の右腕に、黒いモヤのような瘴気の塊がくっついていた。 瘴気の塊がはっきりと具現化し、ジロッっと俺を見る。 「っ!」 「靜?」 瘴気に一瞬、気を取られ秋の存在を忘れた。 秋は俺が見ている自分の右側に首を向ける。 「馬鹿、見るな!!」 具現化した瘴気は手へと変わり、秋の右腕と右肩を思いっ切り掴んでいた。 そして視えたのは、 目から真っ赤な涙を流した ……女だった。
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