*第一話*桜花を鎮静せよ!

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「教室に行こうか」 「はい」 校舎に向かい、僕は二人と歩き出す。 「……なんだって」 「えぇ~……?なにそれ……」 校門を潜る際、隣を歩いていた女子生徒の会話が耳に入った。 「土曜日の練習後に野球部の先輩が校庭の桜に襲われたんだって……」 「まさか。桜が襲うなんて、ないない」 「でも怖いよ~……?」 彼女達は、話しながら僕の横を通り過ぎていく。 (桜が人を襲う……?) 気になる話題に関心が向いた。 周りに注意を向けると、他の生徒もこの話題で持ち切りになっている。 神條高校にある桜は校庭にある一本のみ。 結構な樹齢の巨木で種類は確か、 「……染井吉野……。小桜!」 ようやく今朝、父が言った言葉の意味に気付く。 小桜はニコリと笑い、桜の方へ目を向けた。 「それだけじゃないよ」 「馨」 小桜と一緒に桜を見ていると、隣の馨が口を開いた。 「桜の咲き始めから、今回みたいな事件は数件起きてる」 馨曰く、最初はサッカー部の生徒、次に陸上部……。 その他にも放課後に数名。 どんな襲われ方をしたのか分からないが、父の言ったことと関係しているのは確かだ。 (調べる価値はありそう……) もう一度、桜を見るために桜の方へ目を向けた瞬間──。
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