934人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「ごめん! 待った?」
「いや、俺も今来たところだよ」
約束の十分後に到着して舌を出す翔子の姿に、健太は苦笑した。
小学生のころからの幼馴染である翔子とはもう二十年近い付き合いになるが、時間にルーズなところは昔から変わらない。これはもう、生涯付き合っていかなければならない彼女の一面であるのだと痛感させられる。
しかし、幼馴染という関係から恋人になった彼女への想いは、この程度の短所ひとつで減じるようなものではなかった。
「今日は、どこに行く?」
「ずっと見たかった映画があるんだ。是非、翔子と一緒にって思ってね」
健太の手には、本日から公開される映画のチケットがある。『橋の上の二人』というチープなタイトルが付けられたその映画は、今もっとも話題になっている恋愛映画だった。
「いいわね! 私もその映画、見たいと思ってたのよ」
屈託なく笑う翔子の姿に、健太は大きな満足感を感じていた。
翔子とは、恋人として付き合っている期間もだいぶ長くなっている。そろそろ結婚を考えてもいい時期だと、彼は考えていた。
『それでは次のニュースです。十年前に起きた少女連続殺人事件の犯人の死刑執行が間近に迫っておりますが……』
不意に、傍にある電気屋のテレビからニュース映像が流れ、二人は顔をしかめた。
二十名の少女が暴行され殺害された恐ろしい事件。
二人は、その事件で共通の友人を亡くしていたのである。
最初のコメントを投稿しよう!