934人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
幼いころ、健太と翔子には「三上安美」という共通の友人がいた。
二人と彼女は、いつも三人でつるんで遊んでおり、親友といっても差し支えない存在だった。
大人になっても変わらぬ友情を育んでいけると信じていたし、あの事件がなければ実際そうなっていただろう。
だが、彼女は殺害されてしまった。
おぞましい殺人鬼、戸隠鋭児によって。
「やっと、死刑執行されるんだね」
翔子が、ぽつりとつぶやく。
20人もの少女の人生を理不尽に奪っておきながら、それを為した人間は刑務所の中で10年も生かしてもらっている。
その現実は、健太と翔子を、そして被害者遺族たちを大いに苦しめていた。
逮捕された後も不遜な態度を崩さず、反省の弁すすら見せないあの男に、何度憤りを覚えたかわからない。
せっかくのデートも、今日は楽しめそうになかった。
最初のコメントを投稿しよう!