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「まあしかし、お前も立派になったよ。入ってきた時は生意気ばっかりで、ダメかと思ったぜ」
「いや、お恥ずかしい。竹内警部が引っ張ってくれたからこそ、今の私があるのです。本当に感謝していますよ」
認め合うように、小さく笑い合う。他にも竹内を送る者は何名もいたが、やはり最後に残ったのは、一番世話になった羽鳥だった。
「そういやお前、十年くらい前に三屋市で起きた事件を知ってるか?」
「何がですか?」
不意の質問に、思わず問いを返す。自分の話を聞き返されるのが嫌いな竹内であったが、今回は何も言わずに、それに答えてくれた。
「ほら、あれだよ。あの胸糞悪い事件だよ」
顔をしかめて語る竹内の様子に、羽鳥もようやく何が言いたいのか理解し、大きく頷いてそれに返した。
「なるほど、三屋市少女連続監禁殺人事件ですか。あれは酷い事件でしたね……」
「ああ、あんな事件は俺も初めてだよ。年端もいかないガキンチョ二十人以上を暴行。で、苛烈な拷問の末に殺害だ。ヘドが出る」
「私も話にしか聞いてませんが、相当酷いことをしていたとか……」
「ああ、奴の部屋に押し入った時は呆然としたぜ。目に大量のまち針を突き刺された遺体、身体中バラバラにされた遺体、その切断された腕を抱き抱えて、苦悶の表情を浮かべていた遺体もあった。後から聞いた話だと、姉妹だったんだと。本当、許せねえよな」
語り終えてから唇を噛み締める竹内の表情には、明らかな怒りが見てとれた。
昔からずっと竹内を見てきたが、彼がここまで感情を出すのは珍しいことだった。
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