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俺の傍ら(かたわら)では、飢えた猛獣と化した俺の可愛い『豆太郎』が、鶏肉にむしゃぶりついて食べていました。
今思うと、船長が右手を食べられたのも、この時に前兆が見えていたのかもしれませんね。
『豆太郎』の可愛さに目が眩んでいた俺のポジティブシンキングが、そんな前兆を見逃していたのかもしれません。
重ね重ね申し訳ありませんでした。
俺と『豆太郎』に食事を提供してくれた恐持て(こわもて)の漁師さん。
お名前は『鯔島(ぼらじま) 北海(ほっかい)』さんとおっしゃいます。
俺と『豆太郎』は、鯔島(ぼらじま)さんの愛情たっぷりの手作り弁当と、鯔島uぼらじま)さん家の隣の『松本』さん家の愛鶏『さっちゃん』のお陰でお腹一杯に満たされました。
人に優しくされた安堵感、お腹が一杯になった満腹感から、俺は急激な眠気に襲われ始めました。
そんな雰囲気を悟ったのか、鯔島(ぼらじま)さんがこんな話を切り出したんです。
「どうでい坊主?
腹一杯になったかい?
お前さん泊まるとこ無いんだろ?
家(うち)はかかぁと二人だし、部屋は持て余してるから、あれだったら今晩泊まってくか?」
それを聞いた時は、自然と笑顔になっていました。
「おいちゃん、僕泊まるよ!おいちゃんありがとう。」
そうして、俺と『豆太郎』は鯔島(ぼらじま)さん家に泊まらせてもらいました。
鯔島(ぼらじま)さんの家は平屋建ての一軒家で、屋根には漬物(つけもの)石的な物が乗っている家の隣の大豪邸でした。
イメージ先行だった俺は、平屋の方の家のスライド式の扉を開けそうになってしまいました。
すると背中の後の方から鯔島(ぼらじま)さんが呼んでいる声がしてきたんです。
「おいおい坊主!
そっちは松本さん家だから間違えんじゃねぇぞ。
俺ん家はこっちだぞ。」
声のする方に行くと、なんとも立派な門が待ち構えていました。
こんな門は映画の中でしか見た事がありませんでした。
当時の俺には、その門が物凄く大きく見えて、立ちくらみがしそうな感じでした。
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