俺と『豆太郎』の逃避行編《悲痛》

2/3
前へ
/28ページ
次へ
鯔島(ぼらじま)さんの家の玄関にはビックリさせられました。 初めて見た大理石の玄関。 その大理石が、これでもか、といわんばかりに輝いていました。 その玄関に佇む(たたずむ)鯔島(ぼらじま)さんの神々しさ(こうごうしさ)は、今でも目の奥に焼き付いています。 俺と『豆太郎』は、玄関から少し入った所にある、畳が全面に敷かれた大広間に通されました。 すると鯔島(ぼらじま)さんは、 「ぼうず、自分の家だと思って寛いで(くつろいで)くれや。 俺はかかぁを呼んでくっから、今流行りのファミリーコンピューターでもやっといてくれや。 俺もハイカラなとこあるんだぜ。 ふっ...。」 鯔島(ぼらじま)さんはそう言うと、そさくさと部屋から出て行ってしまった。 しょうがないので、時間を潰そうと思い、20m先のテレビの前まで行く事にしました。 テレビの前に移動すると、鯔島(ぼらじま)さんの言う通り、ハイカラなファミリーコンピューターが置いてありました。 ファミコンに向かいあったのも半年振りとあって、当時の俺は『マリオブラザーズ』の音楽を鼻歌で歌いながらセッティングしていました。 俺のテンションはMAXになってましたね。 そんな中『豆太郎』は、畳の肌触りが大層気に入ったらしく、体を擦り(こすり)ながら鳴いていました。 二人ともこんなに落ち着いて、満たされた気分になったのは、この逃避行生活の中では初めての事でした。 (とりあえず、手前の土管は潜って...。やっぱりワープやっとくかなぁ...。 ノコノコ踏み付けて、同士討ち...。) といった具合に俺のボルテージが最高潮に達した時、目に飛び込んだ光景に疑問を持ったんです。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加